司法試験・予備試験/刑法

正当防衛・緊急避難の短答問題と解説

難易度 3/5・出典の種別: 基本判例

問題

正当防衛(刑法36条1項)の「急迫」性に関する次の記述のうち、判例の立場として最も適切なものはどれか。

  1. ア.侵害が予期されていた場合には、その一事をもって急迫性が失われる。
  2. イ.将来発生することが確実な侵害に対しては、常に正当防衛が成立する。
  3. ウ.急迫性は行為者の主観とは無関係に、客観的な侵害の切迫性のみによって判断される。
  4. エ.過去の侵害に対する反撃であっても、報復の必要がある限り急迫性が認められる。
  5. オ.侵害を予期していたとしても、そのことから直ちに急迫性が失われるわけではないが、その機会を利用し積極的に相手に対して加害行為をする意思で侵害に臨んだときは、急迫性が否定される。正解

解説

刑法36条1項は「急迫不正の侵害に対して、自己又は他人の権利を防衛するため、やむを得ずにした行為は、罰しない」と定める。「急迫」とは、法益の侵害が現に存在しているか、または間近に押し迫っていることをいう。

判例(最決昭和52年7月21日)は、侵害を予期していただけでは急迫性は失われないとしつつ、その機会を利用し積極的に相手に対して加害行為をする意思(積極的加害意思)で侵害に臨んだときは急迫性を欠く、とした(オが正解、アが誤り)。

このように、判例は急迫性の判断に行為者の主観的事情を取り込んでいるため、客観的切迫性のみとするウは誤り。なお最決平成29年4月26日は、行為者が侵害を予期した上で対抗行為に及んだ事案について、36条の趣旨に照らし許容されるものとはいえない場合には正当防衛が否定されるとし、諸事情を総合考慮する枠組みを示している。

過去の侵害に対する報復は「急迫」の要件を欠き(エが誤り)、将来の侵害も同様に「急迫」とはいえない(イが誤り)。

根拠:刑法36条1項、刑法36条2項、刑法37条1項

判例:最決昭和52年7月21日、最決平成29年4月26日

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