司法試験・予備試験/刑法

故意・錯誤の短答問題と解説

難易度 5/5

問題

事実の錯誤に関する次の記述のうち、判例・通説に照らし妥当なものはどれか。

  1. 1.抽象的事実の錯誤の場合、構成要件が実質的に重なり合う範囲であっても故意は認められない。
  2. 2.同一構成要件内の錯誤(具体的事実の錯誤)については、法定的符合説によれば故意が阻却されない。正解
  3. 3.法律の錯誤(違法性の錯誤)があれば、常に故意が阻却される。
  4. 4.方法の錯誤について、法定的符合説によれば意図した客体についてのみ故意犯が成立し、他の客体については過失犯にとどまる。
  5. 5.客体の錯誤の場合、いかなる見解によっても故意は阻却される。

解説

選択肢2が正解。法定的符合説(判例・通説)は、行為者の認識した事実と発生した事実が同一の構成要件の範囲内で符合していれば故意を阻却しないとします。「人を殺そうとして別の人を殺した」場合でも殺人既遂の故意が認められます。

1が誤り:抽象的事実の錯誤(異なる構成要件にまたがる錯誤)についても、判例は構成要件が実質的に重なり合う限度で故意犯の成立を認めます。覚醒剤と麻薬を取り違えた事案などが典型で、軽い罪の限度で故意が認められました。

3が誤り:刑法38条3項本文は「法律を知らなかったとしても、そのことによって、罪を犯す意思がなかったとすることはできない」と定めます。違法性の錯誤は原則として故意を阻却しません。ただし情状により刑を減軽できます(同ただし書)。

4が誤り:説明されているのは具体的符合説の帰結です。法定的符合説によれば、意図した客体についても他の客体についても故意犯が成立します(数故意犯説が判例の立場)。両説の違いが最も現れるのが方法の錯誤の場面です。

客体の錯誤方法の錯誤
法定的符合説故意あり故意あり
具体的符合説故意あり故意なし(過失+未遂)

5が誤り:上表のとおり、客体の錯誤はいずれの説でも故意が阻却されません。目の前の人を狙って撃ち、その人に当たっている以上、認識と結果は具体的にも一致しているからです。

根拠:刑法38条

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